エピローグ

 

デロリアンが旅立った日に

 

 

 

 

 

 

 

 

       

   私はすごくいい女よ。着るものはすてきだし、中身もすばらしい。

  だけど、だれかが私をつかまえようとしたとき、私はもうそこにはいないだろう。

                          

                                                                             死後発見された遠藤康子の詩より

 

 

 

 2015年10月21日。

 康子が生きていれば迎えていたはずの47回目の誕生日。 私は再び、彼女が亡くなった場所に足を運んだ。 

 ここへ来るのは今年で4回目だ。東京は快晴で暑いくらいだった。真っ青な大空に東京スカイツリーがそびえ立つ。こんな建物はいらない。

 47歳の私は、キミのことが、ただただ懐かしい。

 

 DCブランドをクールに着こなしていたヤッコ。

 褐色の肌に小さなビキニが似合っていたヤッコ。

 あのころのキミに敵う女のコなんていなかった。

 クラスメイトだったら、まぶしさでまともに顔を見れなかったはず。

 

 タレントにならなかったら今ごろ、下町の肝っ玉かあちゃんになっていただろう。

 お神輿をかつぐ我が子に目を細めていたのかもしれない。

 

 

    私は横断歩道で手を合わせた。

    康子は言っていた。

 

 「死ぬと魂が浮き上がって、斜め三十度の角度から、人々を身をおろしているのよ」

   

  あたりを見回した。

    サインはなかった。

    10分ほどでその場を立ち去った。

 

    奇しくもこの日は、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』で、マーティが降り立った日だった。

    目の前にデロリアンが現れたら、どこへ連れていってもらおうか。

  現実には、過去には行けない。

  過去のあやまちは巻き戻せない。

   

 それに。

 あれはあやまちだったのだろうか。

 

    康子の死に顏を見た人の言葉を思い出す。

  

   「白くてとってもきれいで、笑ったような顔で眠っていましたよ」

 

 

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